コラム
2026/06/17
著者:
大谷 友里

WEBサイトの成果(コンバージョン率)を少しでも高めようと、多くの企業が様々な「離脱防止施策」を取り入れてきました。しかし、その手法が行き過ぎた結果、ついにGoogleによる厳しい規制のメスが入ることになりました。
2026年6月15日、Googleは検索総合ポリシー(スパムに関するポリシー)を更新し、ユーザーがブラウザの「戻る」ボタンを押した際にポップアップを表示させたり、意図しないページへ強制リダイレクトさせたりする挙動を明確に「スパム」と認定し始めました。
本コラムでは、このポリシー変更の背景から、自社サイトが受ける影響、そして今後目指すべき「ユーザーファーストなWEBサイト設計」について、WEB制作・SEOの現場視点で深く掘り下げます。
これまで、ユーザーが検索結果からサイトに流入した際、求めている情報がなかったり、用事が済んだりして「ブラウザの戻るボタン(←)」を押すことは日常的な操作でした。しかし一部のサイトでは、この「戻る」という行動をプログラムで検知し、ユーザーの離脱を力ずくで妨害するような挙動を実装していました。
具体的には、以下のような挙動が今回のポリシー変更によって「検索スパム」に該当することになります。
履歴の改ざん(History Manipulation): ユーザーが1ページしか閲覧していないにもかかわらず、ブラウザの閲覧履歴(ヒストリー)に偽のページ履歴を複数挿入し、「戻る」ボタンを1回押しただけでは前の画面(検索結果画面など)に戻れないようにする行為。
戻るボタン連動型ポップアップ: 「戻る」を押した瞬間に、「まだ特典を受け取っていません」「本当にお戻りですか?」といった強引なポップアップ画面(モーダルウィンドウ)を表示させ、ユーザーの意思に反して引き連める行為。
意図しない別ページへの強制転送(リダイレクト): 前の画面に戻ろうとしたユーザーを、全く別の広告ページやランディングページ(LP)へ自動的にジャンプさせる行為。
Googleはこれらを「ユーザーの操作を妨害し、不快感を与える不正行為」と断定しました。2026年6月15日以降、これらの手法を継続しているサイトは、Googleの検索アルゴリズムによって検索順位が大幅に低下する、あるいは検索結果から完全に除外される(インデックス削除)という極めて重いペナルティを科されるリスクがあります。
実は、筆者自身もプライベートでニュースサイトなどを見ているときに、元のページにスムーズに戻れないサイトに遭遇して「使いにくいな……」とイライラすることが最近増えてきたように思っていました。きっと、この記事を読んでくださっている皆さんも、同じような不快な体験をした記憶が一度はあるのではないでしょうか。
WEB制作やマーケティングの現場では、数年前から「離脱防止ポップアップ」や「ヒストリーバック制御」が、手軽にコンバージョン(CV)や広告クリックを稼げるテクニックとして一部で重宝されていました。特に、スマートフォンの普及によって、画面下部のスワイプ操作や「戻る」キーによる移動が増えたため、ここを狙ったマーケティング手法が激化していたのです。
しかし、Googleが最も重視するのは一貫して「ユーザーの検索体験(UX)」です。
検索結果からアクセスしたサイトで、前の画面に戻ろうとしても戻れない、あるいは不快な広告を無理やり見せられるという体験は、ユーザーにとってストレス以外の何物でもありません。Googleは近年、コアウェブバイタル(ページの表示速度や視覚的安定性)の導入をはじめ、UXを著しく損なうサイトの排除に力を注いできました。今回の規制強化は、ユーザーの声を代弁するかのような、いわば「UXを軽視した強引なマーケティング手法」に対する最終通告といえます。
「うちは悪質なスパムなんてやっていないから大丈夫」と思っていても、過去に導入した外部のマーケティングツール(CVR改善ツール、EFOツール、ポップアップツールなど)の機能によって、意図せずこの規約に抵触してしまっているケースがあります。今すぐ以下のポイントを確認してください。
実機での検証: スマホやPCで自社サイトにアクセスし、検索結果から入った後に「戻る」を押してスムーズに戻れるか?
履歴の確認: ブラウザの「戻る」ボタンを長押しした際、閲覧していないページ履歴が勝手に量産されていないか?
ツールの仕様確認: 「離脱防止ツール」として導入しているプラグインやJavaScriptの挙動が、戻るボタンの操作をトリガーにしていないか?
もし、戻るボタンの挙動をカスタマイズするようなJavaScriptコードや外部スクリプトを埋め込んでいる場合は、即座にその機能を停止、あるいは仕様を変更する必要があります。
安全な離脱防止策としては、「ページをスクロールして最下部まで到達した際、画面の端にそっとバナーを出す」「記事の末尾に関連リンクを充実させる」といった、ユーザーのブラウザ操作を奪わない手法に切り替えるべきです。
今回のポリシー変更は、一見するとWEBマーケターにとって「打つ手が減った」ように思えるかもしれません。しかし、本質的な視点に立てば、これは「本当に価値のあるコンテンツ作りに原点回帰するチャンス」です。
戻るボタンを押して離脱しようとするユーザーを無理やり画面上で引き留めても、そのユーザーがブランドのファンになったり、質の高い顧客になったりすることは極めて稀です。むしろ、ブランドに対して「しつこい」「騙された」というネガティブな印象を植え付ける結果になりかねません。
これからの時代に検索エンジンからもユーザーからも評価されるサイトを作るためには、以下の視点に基づいた設計が不可欠です。
ユーザーが「戻る」ボタンを押す最大の理由は、そのページに自分の求めている答えがなかったからです。検索キーワードの裏にあるユーザーの本当の悩みや課題を深く理解し、ファーストビュー(ページを開いて最初に目に入る画面)で「ここには自分が探していた情報がある」と直感的に伝わる構成にすることが、最大の離脱防止策になります。
1つの記事を読み終えたユーザーが、次に知りたくなるであろうトピックを予測し、適切な位置に「おすすめの関連記事」や「次のステップ」としての内部リンクを配置します。強制的なリダイレクトではなく、ユーザーが「自発的に次のページをクリックしたくなる」導線設計こそが、洗練されたWEBサイトの証です。
お申し込みやお問い合わせのハードルが高すぎると、ユーザーは不満を感じて離脱したくなります。入力項目の無駄を削ぎ落としたフォーム(EFO)の実現や、スマートフォンの親指で押しやすいボタン配置など、ストレスフリーな操作環境を整えることが、小手先のテクニックに頼らないCVR向上に繋がります。
Googleのアルゴリズムやポリシーは時代とともに変化しますが、その根底にある方針は「ユーザーに最高の検索体験を届けること」からブレることはありません。今回の「戻るボタンのスパム認定」は、ユーザーの自由な意思や操作を奪うような『ハック(騙し)』の技法が、もはや通用しない時代になったことを明確に示しています。
私たちWEB制作会社は、単に見栄えが良いサイトを作るだけでなく、企業のビジネス成果とユーザーの快適な体験を両立させるプロフェッショナルでなければなりません。
今回のポリシー変更を機に、自社サイトのUX(ユーザー体験)を改めて見直し、検索エンジンに永続的に評価される健全な資産へと育てていきましょう。「自サイトの挙動が心配」「現在のツールがスパムに該当するか不安」という企業担当者様は、ぜひお気軽に当社の相談窓口までお問い合わせください。

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